スライド、ハンマリング・プリング、チョーキングなど、ピアノでは再現することができない弦楽器特有の演奏法はたくさんありますが、異弦同音を使った奏法もまたギターなどの弦楽器特有の奏法です。
スリーピースなどギターが一人しかいないバンドなんかでも開放弦を上手く使って厚みを出すのに使ったりしますね。
僕が教えているレッスン教室での生徒との内容を録音したものを記事にまとめたので対談方式でお送りしているので、この異弦同音の使い方のコツを知ってもらえたらと思います。
バンドなどアレンジをされている方は、同じリズム、フレーズでも弾き方を変えるだけで演奏のかっこ良さが変わるのでぜひ参考にしてみて下さい。
目次
異弦同音とは?
①2弦開放弦と3弦4フレット、②1弦開放弦と2弦5フレットなどのように、異なる弦で同じ音程が鳴る場所のことを異弦同音といいます。
また、③2弦12フレットと3弦14フレットチョーキングのように、チョーキングを使うことで同じ音程を出すことも可能です。
このように、2つの弦を使って同じ音程をユニゾンさせて弾くことで、音に厚みを出したり、コーラス効果を伴った特殊な音程のゆらぎを得た演奏をすることができます。
新曲のアレンジの修正
今回は、弟子のひとりであるab initioのギタリスト 野村将寛が、バンドの新曲のギターアレンジに悩んでいるところだったので、その時に語った「異弦同音」についてのレッスン内容をお見せしていきます。
▼ちなみに、彼のバンドはこんな感じ


……ふむふむ、なるほど。
これは、いろいろ手の付けようがあるねぇ。
バンドにグルーヴを合わせる
▲弟子ギタリスト 野村プレイ(Aメロ0:07~)
まず、気になるのはAメロ部分の演奏。
オルタネイトピッキングで弾いているせいか、リズムがハネてしまっています。
それと、力みすぎ。
Aメロの抑えた部分だし、この後バンドで盛り上がる部分だから、ここはもっと無機質な感じが合うと思います。
▼一度、その部分だけ切り取って、野村の演奏を再現してみました
▲ギタリストchoroプレイ Aメロ(オルタネイト)
ダウンピッキングと、オルタネイトピッキングの使い分けを、何となくでやってたり、曲のテンポが速い遅いだけで切り替えてしまう人が多いけど、ちゃんとその楽曲のその場面に合ったピッキングを選択して弾くのが重要です。
▼この曲のAメロの場合は、このようにダウンピッキングで弾いたほうが、きっちりリズムが安定して聴こえますよね?
▲ギタリスト choroプレイ Aメロ(ダウンピッキング)
楽曲に音色が寄り添うアレンジ
オルタイトピッキング→ダウンピッキングにすることで、グルーヴに関しては合ってきたけれど、音色が少し固い感じがします。
▼なので、ブリッジミュートを加えて音に柔らかさを持たせるのはどうだろう?
▲ギタリスト choroプレイ Aメロ(ブリッジミュート)
音が固い原因は、他にもあります。
このフレーズの最初の最初の同じ音が続く部分は2弦開放弦で弾いています。
細い弦ほど音色が固くなるので、異弦同音である4弦9フレットや5弦14フレットといった太い弦を使って同じフレーズを演奏するだけで丸みを持ったサウンドになってきます。
▲5弦14フレット(0:00~0:03)、4弦9フレット(0:04~0:06)
どうですか?
同じ音程なのに、聴こえ方が全然違いますよね?
あらゆる可能性を試してアレンジ
せっかく色々試してみたので、他にも試してみましょう。
例えば、1音1音ピッキングした後に左手を浮かせてミュートして弾く、スタッカートを用いて弾くとこんな感じになります。
▲ギタリスト choroプレイ Aメロ(スタッカート)
さて、ここからが工夫のしどころ。
今までのを踏まえて、4弦9フレットのブリッジミュートを基本にして、2弦開放弦をところどころにアクセントとして入れてあげる感じにしています。
▼同じ音程なのに、違った音を弾いてるような感じがしませんか?
▲4弦9フレットブリッジミュートと2弦開放弦の複合
▼ミュートを外しても、この感じだとハマりそうだったので、試しにミュートを外しても演奏してみました
▲4弦9フレットと2弦開放弦の複合
このように、元のフレーズのメロディやリズム自体は変えなくても、楽曲に合ったアレンジを演出することが可能です。
最初に作ったフレーズ自体が悪いといきなり決めつけてしまわず、色々と試行錯誤を繰り返してみましょう。
感動を与えるためのスキルを教える授業

他にもバンドマンを教えていますが、上級者ほど、1時間のレッスンで、たくさんの発見と感動を覚えて帰っていきます。
プロを目指す方にとっては、こういった「見える技術」ではなく、「見えない技術」を磨く努力が重要になってきます。
リハの音源もってきたんで聞いてください~。