【ミックス講座 7/9】プロのエンジニアが教えるボーカロイドの調教テクニックとコツ

通常VOCALOID Editorのパラメータを使って調教していきますが、ここではDAWソフトのプラグインを使って上手く歌わせるコツや方法を解説。

コンプレッサーやEQを使うだけで、こんなに簡単に生の人間の歌声のようになってしまいます。
では具体的に、どのような方法を使って声や発音を人間っぽくしたのかを聞いていきます。
あなたのmix技術上達の手助けになれれば幸いです。

の楽曲が完成するまでの作業工程をお見せしています

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では、対談形式で、ミックスが完成するまでの流れをご覧ください。

choro

02
なるほど。

実際に上原さんに編集してもらって、かなり声や発音が人間っぽくなったのですが、どのようなテクニックを使ったのでしょう?

また、実際に完成までに行った作業を全て教えてもらえますか?

03
まず一番気になったのは、ボーカロイドの音程の取り方が一定だったという事です。

人間が歌う時って、意図的にしてるテクニックと、無意識にしてる事があるんです。意図的にしてるテクニックというのは、声を震わせるヴィブラートとか声に強弱を付けたりするといったニュアンスの部分ですね。

無意識にしてる事というのは、音程を取る時に一瞬音を探る動作があるんです。

choro

02
ボーカロイドのソフトでも「表情コントロールプロパティ」というのがあって、それの「ピッチコントロール」の「ベンドの深さ」が8%でデフォルトで設定されてるんですよね。

今回は、お互いに操作するとごちゃごちゃしそうなので0%にしました。

お話続けてもらえますか?

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顕著に出るのは、音程の移動の差がある時ですね。例えば、低めの音程から高い音程にいく時は、もうほんの一瞬ですが高い音程にいく前に音程が高い方にはみ出るんです。

ボーカロイドだとその動作が無いので、どうしても機械が歌ってるようになるんですね。そこでオートチューンという音程を編集出来るソフトでそれらを人工的に作っていきました。
ボカロのエディタ-2
これが実際にオートチューンでピッチを編集したものです。
これはサビの「駆け上がるあの子は全力少女 振り返る暇も無く」というところですね。
赤色の線が元々のピッチ編集前で、緑色の線がピッチ編集後です。横の灰色の線に合ってれば音程がピッタリ合ってるという事になります。

そうして見てみると、赤い線は全体的に横線に対してピッタリなところが多いですよね?でもそれって人間が歌うとしては有り得ない事なんですよ。

そこで注目して欲しいのが、低い音程から高い音程にいく時はほぼ全て音程を少しだけ上げています。「駆け上がる」の「け」、「あの子は」の「は」、「全力」の「りょく」、「振り返る」の「り」、「暇も無く」の「ま」、の部分です。

ここはサビの部分なので、これは特に大げさに上げている方です。Aメロとかの落ち着いてる部分はここまでやりません。それと、あまりやりすぎるとただ単に音程が外れているという事になるので、聞きながらある程度自然になるように調整しています。

choro

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なるほど。こう見るとかなり細かい動きですね。

実際にボーカロイドのほうで調整してはいませんが、ボーカロイドのソフトで行うともっと単純な動きになりそうですし、一音一音やるとなるとかなりの手間がかかりそうです。

03
ボーカロイド側でやるより、もう少し細かい部分の調整になりますね。こうやって調整してる部分は0.1秒くらいのところでの話です(笑)

その他、「全力」の「ぜん」、「暇も無く」の「なく」部分では、棒読みになるより、少し音程がぶれた方が良かったりするので、元の音程の赤線が真っ直ぐになってるのに対して、修正後の緑色の線は山と谷を作ったりしています。

こういった感じで歌全編で人間の動作を人工的に作っていく訳です。僕の場合は全部やって1時間~2時間くらいの作業ですね。

choro

02
どちらにせよ、かなり手間のかかる作業なんですね。

でも、僕がやったら3日くらいかかりそうです(笑)

03
聞いた感じでほんとサクサクやっていきます(笑)

その他、箇所箇所でボリュームを上げ下げしていく作業があるんですが、サビで強く歌ってる時はその分、声にアタックが出たり、一瞬ボリュームが大きくなるんですね。それもボーカロイドでは一定になってたりするので、それも人工的に作っていきます。
ボカロのエディタ-3
これが実際にボリュームを上げ下げしてる画面です。画像上側の黒いものが波形と呼ばれるものです。その下の青い線がボリュームを上げ下げしてる部分ですね。上に上がればボリュームは大きくなって、下に下がればボリュームは下がる訳です。

それで見てもらいたいのが、「け」、「こ」、「しょう」の部分です。その部分は人間が強めに歌うと自然とアタックが出る場所だったりします。元々のボーカロイドでは棒読みな感じだったので、それをあえてボリュームを大きく出して声にアタックを作っています。この作業もだいたい1時間から2時間くらいはかかりますね。

このようにピッチとボリュームを人間が歌ってるようにシュミレートしていけばおおよそ人間が歌っているような雰囲気に近づいていきます。

choro

02
かなり細かい作業なんですね。

いつも思うんですけど、作る側は1曲を作るのに何時間も何日も掛かるのに、聴く側は3分くらいで聴いて判断できてしまうんですよね。

別にそれで構わないとは思うんですけど、今回それがアーティストだけじゃなくエンジニアも同じだと気付けた点が嬉しいです。

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違和感なく聞いてもらえるというのが一番難しくて時間掛かる作業ですよね。こういった細かい作業もあくまで自然に聞いてもらうという為にやってる作業なんですよね。
ボカロのエディタ-4
では、次にミックスの時にボーカロイドに対して使ったプラグインを紹介します。プラグインと呼ばれるエフェクターで音量や音質を整えたりしていきます。

プラグインを使っている順番としては、左から右の順番に挿しています(上図参照)。プラグインを挿す順番も音質に大きく作用するので重要です。

まず左からWaves社のMV2という音量を整えるコンプレッサーです。僕は歌にこのコンプレッサーをよく使ったりします。

このコンプレッサーは小さい音だけを持ち上げたりする事が出来るので、自然な感じで音量を整える事が出来ます。このコンプレッサーは普通のコンプレッサーとはちょっと違う動作をするので詳しい説明はこちらのリンク先を参照にしてください。

コンプで「潰さずに」音量コントロール
ボカロのエディタ-4 (1)
真ん中がWaves社のRenaissance EQと呼ばれる各周波数毎の音量を上げ下げ出来るものです。choroさんからもらったボーカロイドは少し中低域から中域が多く出ていたので、その部分をカットしています。

ちょっとここで余談を挟みますが、EQの使い方をもう少し詳しく解説しておこうと思います。

ギタリストがエフェクターとして使うEQは音作りの為という認識があると思います。もちろんそういった用途で使う時もあるんですが、エンジニアが使うEQというのは、EQは等しくするという意味のEqualという事からの由来通り、基本的には音をフラットにするという使い方をする事が多いです。

-choro

02
こういうプラグイン、エンジニアが作業してるの見たことありますー。

しかし、EQの使い方に関しては目からウロコです!

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今回のボーカロイドでのEQ処理の場合は、中低域から中域が多く出ていたので、それを帯域的にフラットにする為に処理しています。EQ処理の基本的な考えとして、多く出ている帯域があればそこをカットするし、足りない帯域があればそこをブーストします。

元の音がフラットならば何もする必要はありません。その考えに基づいてEQ処理していくんですね。これについてはまたミックス編で詳しく説明出来たらと思っています。
ボカロのエディタ-4 (2)
右はWaves社のDeEsserです。DeEsserというのは「サシスセソ」などに多く含まれる高域の成分を抑えるものです。コンプレッサーなどで音量を一定にしていくと、「サシスセソ」音が目立ってきたりするので、このプラグインを使って高域成分を抑えています。

これらに加えて残響感を付けていきます。
ボカロのエディタ-5
上図は残響処理として使ったプラグインです。

今回はWaves社のRenaissance ReverbとNuendoのディレイを使いました。僕の場合は、ディレイはほぼNuendoのディレイを使っています。リバーブはその時によって様々です。Nuendoのリバーブもよく使います。

choro

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EQに関してもそうですが、ディレイ、リバーブも音作り、ミックスに関しては必需品といっていいくらいのものですよね。

03
そうですね。基本使うエフェクターといえば、EQ、コンプレッサー、リバーブ、ディレイですね。それらをどううまく使っていくかです。

ディレイはステレオで使っていて、テンポに対して8分音符で掛けているのですが、LとRで少しディレイタイムをずらして左右に広がりを出しています。

リバーブはほんともう聞いた感じでパラメーターを決めてます。

ただし、歌に掛けるリバーブはPredelayという元の音から残響が起こり始めるまでのパラメーターはほぼ40msecあたりにしています。これを0にしてしまうと、歌うと同時に残響が発生するので、歌が残響に埋もれて奥まってしまいます。

あと、リバーブ成分の高域はほぼ確実にカットします。でないとリバーブ成分がシャリシャリになって歌とオケが馴染まなくなってしまいます。

こういう処理をしてボーカロイドを人間っぽくし、オケに馴染ませていく訳ですね!

choro

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ありがとうございますー!

僕もエンジニアの作業について、少しずつ理解が深まってきたので、次回曲に関してはさらに色んな実験的なことやっていきたいと思うので宜しくお願いします!

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宜しくお願いします!

次の記事はこちら
【ミックス講座 8/9】打ち込みドラムをコンプ、リバーブを使ってミキシングするテクニック

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回の対談テーマとなった楽曲『全力症状』について

今回のテーマ曲『全力症状』は改変、二次創作、そして商用利用を推奨するプロジェクト(第1弾)の対象楽曲となっています(クリエイティブ・コモンズ・ライセンスを利用)。

フルverに加え、カラオケ音源、パート別素材まで自由にダウンロード可能です。
※ダウンロードはこちらからできます。
『全力症状(ZENRYOKU syndrome)』無料ダウンロードサイト

パート別「歌ってみた」、「演奏してみた」や歌詞・メロディ・編曲をアレンジした作品など、幅広い用途で利用可能なのでぜひ挑戦してみてください!

オリジナル記事『マナスタ!』

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ABOUTこの記事をかいた人

choro

2010年、Jeeptaギタリストとしてメジャーデビュー。音楽教室「コロイデア音楽塾」代表。作詞、作曲、アレンジ他、現在もメジャーアーティストを中心に(takekings、CANDY GO!GO!、サナダヒデト等)サポートギタリストとしても活動中。
バンドマンの本音、ファンとアーティストの関係、音楽ビジネスの正体など、音楽業界のウラ話を書いた「 ギタリストchoroの音楽よもやま話」は月10万PV以上の人気サイト。