今回はプロが使うエンジニア、そしてスタジオでのレコーディングの方法、テクニックを紹介。
空気感を出すためのマイクの立て方、マイキングについても解説していますので、初めての方はもちろん、自宅で曲作り、ミキシングされている方も参考になるのではないかと思います。
レコーディングの風景や流れを対談方式で記事にしているので、リアルな現場の雰囲気を体感できると思います。
この楽曲が完成するまでの作業工程をお見せしています
では、対談形式で、ミックスが完成するまでの流れをご覧ください。
ここから対談です
▲今回使用したギターアンプ / The amplifier choro used.「LINE6 SPIDER Ⅱ 15」
choro)8インチくらいの大きさです。普段ライブとかで見るアンプと比べるとかなり小さいです。初めて使うアンプだけど、まぁ、なんとかなるっしょー!って感じで(笑)
上原)僕もこれで録るのは初めてですけど、鳴らしてみると結構しっかりした音が出るので全く問題なさそうですね!
choro)上原さん、これアンプに2本マイク立ってますよね?ライブハウスだとマイク1本の場合が多いけど、レコーディング現場ではよく見かけます。これって、どういった意味があるんですか?
上原)僕はエレキギター録りの時はSHUREのSM58とSENNHEISERのMD421の2本を使ってます。
SM58は明るい音、MD421はこもった音で録れるんですね。ミックスの時にこの2つマイクの混ぜ方で音作り調整します。
この2本で録ると低域もしっかり録れてパンチのある音になるんです。1本だけで録る場合だとSHUREのSM57がバランス良く録れたりしますね。
▲今回使用したエフェクター(右から、チューナー、クリーンブースター、オーバードライブ)
▲「AONEKO/33v Clean Booster CB-1 」
▲「AONEKO/33v Booster Plus+ BP-1 」
choro)エフェクター類は全て、普段のライブやレコーディングで使用しているものです。

choro)ここがミキシングルームですね。
エンジニアさんがここからミュージシャンに指示を出します。
上原)このスタジオハピネスではDAWがCubaseというソフトですね。
左がエディット画面です。ここに録音された音が表示されていきます。
右がミキサー画面で、フェーダーと言われるボリュームを上げ下げ出来るものがあるので、それで録音された音のバランスを取っていきます。

choro)ここがレコーディングブース。
こんな感じで狭いところに閉じ込められてせかせか弾くわけです。
上原)1人の場合だとレコーディングブースって孤独ですよね(笑)
レコーディングブースって音が反射しすぎないように作られてるので、余計空気が重苦しく感じます。
録音する時はミキシングルームからトークバックスイッチというスイッチを押すと、choroさんが付けているヘッドフォンにミキシングルームの声が聞こえるようになるので、それで録音開始などの指示を出していきます。
choro)いつも、そっちで何やってるか、何話してるかわからないから不安なんですよね。
上原)レコーディングの時はトークバックスイッチを押すタイミングも結構重要なんです。
例えば、ミキシングルーム側で全然違う話を話したりしてて、演奏者以外の人が笑ったりとかするじゃないですか?
その笑ったタイミングでスイッチを押すと、会話の流れは聞こえずに笑ってるところだけ聞こえてしまうんで、演奏者が自分の演奏に対して笑われてるんじゃないか?と思ってしまう事もあるんです。
演奏者は特に気を張ってるので、そういう事の注意もレコーディングエンジニアには必要ですね。

choro)こんな感じで、レコーディングしていきます。
今回は、実際に録った僕のギターを何個か聴いてもらいながら色々解説していきますね。
▲Egt1_Rhy
choro)アンプの歪みも使えそうだったので、バッキングギターはアンプの歪みで録りました。
いつも、レコーディングで思うんですが、マイクで録った音って、アンプから直接耳で聴く音とけっこう違いますよね?
この時も、録音した音聴いて、ちょっと低域が多くないですか?って確認したような…。
上原)たしかにかなり多いですが大丈夫です(笑)アンプから直接耳で聴く音は、その空間の部屋の鳴り等も一緒に聞き取っているんですが、マイクで録った音はキャビネットのすぐ傍で録ってるので、やっぱり聴いた感じは結構違いますね。
そういった違和感を無くす為に、エンジニアによっては空間で鳴ってる音を拾う為にアンプから離して部屋の中にマイクを立てたりもします。オフマイクとかアンビエンスとか言われるやつですね。
僕は録りの時にはなるべく低域を多めに録ってるんです。ギターの低域って結構重要で、低域が入ってないと迫力の無いスカスカの音になりがちなんですよね。
多い分にはカットして調整していけるんですが、無いものを増やすって事は難しいんですよ。
なので低域が多く録れるMD421を立てていて、このマイクで録れた音の混ぜ具合でのちのちミックスの時にギターの低域量を調整していきます。
▲Egt1_Rhy_Dbl
choro)これはいわゆる「重ね」ってやつです。最初の『Egt1_Rhy』とほとんど同じものをもう一回弾いてます。
同じ音を重ねることで、厚みが増したり、広がりが出る…って解釈してるんですけど、実際どうなんでしょう?

上原)そうですね。同じ音を重ねてスピーカーのLとRで鳴らす事によって、ステレオの空間を広く使えるので厚みが増して広がりが出ます。
Aメロは1本だけで、サビで2本重ねて厚みと広がりを出すなんてパターンもよくありますね。
▲Egt_Lead[Intro&Sabi]
choro)リードギターは僕のオーバードライブの歪みで録りました。
こちらの歪みのほうがエッジが利いててリードギターには合うなってことで。
ちなみに、リードギターもイントロなんかは同じフレーズをもう一本録ってます。
サビのフレーズは、いわゆるchoro節ってやつです(笑)
上原)たしかにchoroさんっぽいですね(笑)それにしてもこのフレーズかっこいいです!
バッキングと音色を変える事によって立体感が出ますね。
リードギターはやはり目立つ音色の方が良いですね。
▲Egt2_Rhy
choro)これは、元々のアレンジにはなかったフレーズで、レコーディング現場で急遽考えて録ったフレーズです。
レコーディング現場では、エンジニアさんからこういう要望があったりしますよね?
上原)僕がそういった要望を出すのは、完全にエンジニア視点からの事です。
バッキングギターとリードギターって結構音域が離れてるじゃないですか?
現状聞いてると、そこの間に音の周波数的にスキマがあるなーと思ったのでそこに何か埋めたくなったんです。
8分音符で引いてもらったのは、バッキングギターが休符を入れて引いてるのに対して、そこのスキマに音を埋める為ですね。ミックスの時にそれらの出し具合を調整して、音の立体感を作っていきます。
▲EgtRecRough-Zenryokushoujyou
choro)この日録った音を、その日のうちにラフミックスしたものです。
他のサウンドと混ざるとどんなふうになるのか?また、ライン録りのギターとの違いを比べてみると面白いと思います。
上原)やはりアンプで録った方が音が太くて荒々しいですね!
デモで録ってあったバッキングギターも足してみるとなかなか良かったので、今日録ったギターに加えてうっすら足してます。
ただ、現状録ったギターと打ち込みのドラムとベースで温度差を感じますね。
デモのギターに合わせてドラムとベースの音作りをしていたので、これからミックスでそれらの温度差を無くして統一感を出す作業になっていきます。ギターに凄い勢いがあるので、全体の統一感を出すのが難しそうですが(笑)
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