ついついmixというと、EQやコンプなどでの音作り、エフェクトやプラグインを沢山使いたくなるが、ミキシングの技術で一番大事なのはボリューム調整です。
奥行、空期間、広がり、音がこもるなど、学んだテクニックを使えば使うほどミックスが難しくなってきます。
初心者はもちろんですが、それなりに慣れている人でも、自然さを失ってどんどん加工されたサウンドになっていってしまったりする。
基本のやり方にまず忠実になってもらって、そこから手順を踏んでもらえばきっとコツが掴めてくると思うので参考にして頂きたいと思います。
目次
この楽曲が完成するまでの作業工程をお見せしています
では、対談形式で、ミックスが完成するまでの流れをご覧ください。
上原
今回はミックス解説という事で、ミックスで一番大事なバランスの組み立て方、流れの作り方について説明していこうと思います。
ミックスにおいて極論を言ってしまえば、音作りというのはそんなに重要な要素ではないんです。ありがちなのが、個々の音作りにこだわり過ぎて、全体のバランスや流れが出来ていないという事に陥りがちです。
ミックスで一番重要なのは、間違いなく全体のボリュームバランスと流れです。
choro
上原
もちろんミュージシャン的には音というものが一番気になる部分だとは思います。実際の要望は音作りに関する事が多いので、それも加味しつつ、流れを作っていくという感じですね。
ではそれぞれのパート別に解説していこうと思います。
青い線がオートメーションといって、ボリュームを上げ下げしている所です。まず、ドラム、ベースにおいて重要なのは、どの場面でもベース、キック、スネア、ハイハット、などそれぞれのパーツの聴感上のボリュームが一定に聞こえているというのが一番重要です。
例えば、ボリュームが下がってる所はAやBといった比較的音数が少ない所です。ボリュームが上がってる所はサビなどのギターが何本か加わって音数が増えている所ですね。
音数が増えている所で、ドラムベースの音量がそのままだと埋もれてしまう事が多いんですね。しかし、リズムがしっかり聞こえないとサビは盛り上がりません。音数が増えても、一定に聞こえるように基本的にはサビでボリュームを上げる事が多いです。
僕の場合は音数が増えてなくてもサビでボリュームを上げてほぼ無理やり盛り上げる事が多いです。こうした盛り上げたり、盛り下げたり、各場面毎にメリハリを付けていくのはエンジニアの仕事でもあります。ミックスにおいて、バンド等の演奏そのものだけでは盛り上がりが思ったより足りない場合が多いんですよね。
choro
この辺に関しては、僕は普段生演奏でやっているし、ライブもしているので、感覚的にわかっていて、自然にやっていることだと思います。
上原

こちらがバッキングギター類の画面ですね。今回は仮ギターを足してみるとなかなか良かったので、レコーディングしたギターに足して音作りをしています。
バッキングギターのバランスも基本的にはドラム、ベースと同じ考え方です。音が上がっている所はサビの部分です。サビになるとリードギターが入ってくるのでそのままだと埋もれてしまうので、他の楽器とのバランスを聞きながら聴感上ちゃんと聞こえるように調整していきます。
▲リードギター類画面
こちらがリードギター類の画面です。上の段の3つのグループがイントロのメインリフギター、真ん中の段の3つのグループがサビのメインリフギター、その次がBで入ってくるサイドギター、下から見て2段目が3サビに入る前の決めブレイクでのリフギター、一番下がソロギターです。
レコーディング時にはそのまま流れで弾いてるところも僕の場合は場面毎に細かくチャンネルを分けていきます。細かくチャンネルを分けた方がバランスが取りやすかったり、それぞれの場面毎に違う音作りがしやすいのでそうしています。
これらの上モノと呼ばれるギター類のボリュームバランスはそれぞれの場面の流れを自然に作る事が一番重要です。
choro
場面毎にチャンネルを分けるってあまりエンジニアさんがやってるのは見たことがないかもしれません。
逆に、ひとつのチャンネルにまとめられる時はまとめてしまうイメージ。上原さんがやってるやり方は、僕もやってます。
ギターは特に、場面場面で音を変えることが多いですからね。
上原
オートメーションで細かく書いていくというのでも良いんですが、多少面倒な部分があったりするので、僕の場合はそれぞれの属性毎にチャンネルを分けていってますね。
それで、サビに入って盛り上がったなとか、ここはAだから少し落ち着いてるなとか、Bだからサビへの予感を感じさせるな、としっかり分かるように、しかもそれらがベーシックのドラム、ベース、ギター類と自然に繋がるように調整していきます。
もちろん、演奏者側としてもそういった事を意識して曲は作っているはずですが、エンジニアはそれらをより強調するようにバランスを取っていきます。
choro
だけど、プロとは圧倒的な差が出てしまうんです。
上原
一般的な曲の場合で、一番ダメなパターンは、サビで盛り上がってないという事ですね。サビで盛り上げようとするなら、ボリュームが大きくなっているか、リズムの刻みが増えるか、という事が一般的です。
僕の場合は、そのままの演奏でサビでボリュームが上がってないなら各パートのボリュームを上げるし、もしビート感の刻みが足りないなら、例えばハイハットの素材を16分でほんとうっすら足したりもします。とにかくありとあらゆる手を使ってサビを盛り上げようとする訳です(笑)
▲ボーカル類画面
こちらがボーカロイドでのボーカル類の画面ですね。ボーカルで一番重要な事はこれも他のパートと同じような事になりますが、どの場面でも聴感上一定に聞こえる事、そして歌詞がしっかり聞き取れる事ですね。
大きく分けて3箇所ボリュームが上がってる所があるのですが、それらはサビの部分です。サビに入ると音数が増えてる訳ですから、そのままだと楽器類にボリューム的に負けてしまいます。
なので、サビに入ってもしっかりボーカルが聞こえるようにボリュームを上げる訳です。今回の場合はその上で前回の記事で解説したように人間が歌っているように細かく部分的に強くしたり等してるんですね。
choro
実際ミックスのやり取りの際に、上原さんにボーカルを上げている箇所なんかを伺っていたけれど、教えてもらったからわかるって感じで、とても自然な上がり方なんですよね。
「音楽をより自然に聴かせる」ってのがミックスの作業なのかなぁ、って思います。
上原
そうですね!盛り上がる所は盛り上げる、落ち着いている所は落ちかせる、といったごく当たり前の事を自然に聞こえるようにしていくのがミックス作業ですね。
でもこれって意外に難しくて、それぞれの場面がどういうテンションなのかというのを適切に把握しないと曲の流れというのが出てこなかったりしますね。
繰り返しになりますが、ミックスで一番重要なのは、ボリュームバランスと流れです。
各音にこだわるよりも、こういった曲の流れを理解して、最後まで飽きずに聞けるようにするというのが何よりも重要なんですね。ミックスして客観的に聞いてみて、場面の流れがなく曲を聴くのが飽きてしまったらそれはミックス失敗ですね(笑)
ミックスについてさらに詳しく学びたい方はこちら
【ミックス講座第2弾】ボカロ曲「井ノ頭線」ミックスのカテゴリー
前の記事はこちら
【ミックス講座 8/9】打ち込みドラムをコンプ、リバーブを使ってミキシングするテクニック
「全力症状」ミックスの記事一覧はこちら
「全力症状」ミックスのカテゴリー
最後に
この記事をもって、choroさんと上原さんの共同制作楽曲『全力症状』の制作過程は全て公開しました。
今回のテーマ楽曲『全力症状』は無料ダウンロードが可能です。
パート別「歌ってみた」、「演奏してみた」はもちろん、歌詞・メロディ・編曲をアレンジした作品、本作品を使用したムービー制作など、幅広い用途で利用可能なので、ご興味のある方は下記のページでダウンロードしてみてください!
全力症状(ZENRYOKU syndrome)無料ダウンロードサイト
弾いてみた、歌ってみたも参考にどうぞ
ボカロ曲を違う歌い手の声でどう変化するのか?弾き手が変わることでどう変化するのか?
楽曲制作、アレンジ、ミックスをする上で、楽しみながら勉強、上達に役立てられると思いますので合わせてぜひご覧ください。
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